医療・介護福祉

Vol.03

Vol.03 介護現場の小さな不便を仕組みで減らす

2026年5月15日

Vol.03 \u4ecb\u8b77\u73fe\u5834\u306e\u5c0f\u3055\u306a\u4e0d\u4fbf\u3092\u4ed5\u7d44\u307f\u3067\u6e1b\u3089\u3059

PROFILE

会社名:株式会社サンプルケア

代表者名:鈴木一郎

所在地:愛知県春日井市勝川町

設立年:2012年

従業員数:48名

事業内容:訪問介護、生活支援、家族向け相談窓口

サイト:sample-care.example.jp

午後2時、勝川駅近くの事務所に戻った鈴木一郎代表は、訪問記録の端に書かれた「玄関の段差が怖い」という一文を見逃しませんでした。介護の現場では、数字にならない小さな不安が翌月の事故につながることがあります。

始まりは、予定通りにいかなかった一日から

鈴木氏が今の事業を語るとき、最初に出てくるのは成功した案件ではありません。「きれいに進んだ仕事より、手が止まった日のことの方が覚えています」と話します。創業時から順調だったわけではなく、むしろ早い段階で自分たちの弱さを見せつけられました。

——最初から今の形を狙っていたのですか。
鈴木氏: 「違います。最初は売上を作ることで頭がいっぱいでした。ただ、独立直後は1日18件を回す日もあり、記録を書く時間が深夜にずれ込みました。その時に、数を追うだけでは続かないと分かりました。何を受けて、何を受けないか。そこを決めないと、会社の体力が先に削られるんです」

転機になったのは、訪問件数だけで評価しない運営に切り替えたこと

転機は大きな投資ではなく、日々の優先順位を変えたことでした。株式会社サンプルケアでは、売上表の横に現場のメモを置き、数字だけでは判断しない習慣を残しています。たとえば一件あたりの利益が高くても、準備に無理が出る仕事は次回の受け方を変える。逆に小さな依頼でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。

「判断を遅らせると、結局だれかが現場で無理をします」と鈴木氏は言います。会議で決めるのは、理想の話ではありません。今週の人員、道具、移動時間、担当者の疲れ具合。そうした細かい条件を並べたうえで、受ける量を決めています。

強みは、派手な言葉より手順に出る

同社のこだわりは、ヘルパーのメモを拾い、家族・ケアマネ・現場で同じ絵を見ることです。外から見ると地味ですが、ここを曖昧にすると品質は簡単に揺れます。取材中にも、鈴木氏はスタッフの一言に何度かメモを取りました。理由を聞くと「あとで本人に返すためです。聞きっぱなしにすると、次から言ってくれなくなる」と答えました。

——人を増やせば解決する問題ではない。
鈴木氏: 「そうですね。人数を増やす前に、迷う場所を減らす方が先です。うちは大きな会社ではありません。だからこそ、一人の経験を一人の中に閉じ込めない。写真でも、短いメモでも、次の人が使える形にしておく。それだけで翌月のミスが減ることがあります」

これから広げたいこと、広げないこと

これからの目標は、春日井市内で、退院直後の一週間を支える短期集中サービスを育てることです。ただし、鈴木氏は拡大を急ぎません。採用を増やす、拠点を増やす、広告を強める。選択肢はありますが、今の顧客に向き合う時間が削られるなら採らないと決めています。

最後に、同じ地域で事業を続ける人へ伝えたいことを尋ねました。少し考えてから、鈴木氏は「自分たちが続けられる速度を、他人の物差しで決めないこと」と答えました。大きく見せるより、明日も同じ品質で開けること。この記事に出てきた姿勢は、多くの小さな会社に通じる現実味があります。

事務所の棚には、訪問先ごとの小さな改善メモが月別に並んでいます。鈴木氏は「大きな制度より、玄関でつまずかない一歩の方が先の日もある」と言います。介護を生活の側から見ている会社です。

X f LINE
ホーム インタビュー一覧 お問い合わせ TOPへ