Vol.04
Vol.04 受託開発会社が顧客理解を磨くまで
2026年5月15日

PROFILE
会社名:株式会社サンプルテック
代表者名:高橋美咲
所在地:福岡県福岡市博多区冷泉町
設立年:2019年
従業員数:21名
事業内容:業務システム開発、保守運用、社内ツール改善
サイト:sample-tech.example.jp
博多のオフィスで、高橋美咲代表は営業管理画面のエラー通知を見ながら「仕様書にない一手間が、現場の本音なんです」と言いました。受託開発の会社でありながら、同社の会議ではコードより先に電話応対や紙の控えの話が出ます。
始まりは、予定通りにいかなかった一日から
高橋氏が今の事業を語るとき、最初に出てくるのは成功した案件ではありません。「きれいに進んだ仕事より、手が止まった日のことの方が覚えています」と話します。創業時から順調だったわけではなく、むしろ早い段階で自分たちの弱さを見せつけられました。
——最初から今の形を狙っていたのですか。
高橋氏: 「違います。最初は売上を作ることで頭がいっぱいでした。ただ、創業2期目、半年かけた予約管理システムが現場でほとんど開かれなかったことがあります。その時に、数を追うだけでは続かないと分かりました。何を受けて、何を受けないか。そこを決めないと、会社の体力が先に削られるんです」
転機になったのは、納品物ではなく、使われ続ける画面を評価軸にしたこと
転機は大きな投資ではなく、日々の優先順位を変えたことでした。株式会社サンプルテックでは、売上表の横に現場のメモを置き、数字だけでは判断しない習慣を残しています。たとえば一件あたりの利益が高くても、準備に無理が出る仕事は次回の受け方を変える。逆に小さな依頼でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
「判断を遅らせると、結局だれかが現場で無理をします」と高橋氏は言います。会議で決めるのは、理想の話ではありません。今週の人員、道具、移動時間、担当者の疲れ具合。そうした細かい条件を並べたうえで、受ける量を決めています。
強みは、派手な言葉より手順に出る
同社のこだわりは、担当者の机の上、二重入力、月末だけ増える例外処理まで見ることです。外から見ると地味ですが、ここを曖昧にすると品質は簡単に揺れます。取材中にも、高橋氏はスタッフの一言に何度かメモを取りました。理由を聞くと「あとで本人に返すためです。聞きっぱなしにすると、次から言ってくれなくなる」と答えました。
——人を増やせば解決する問題ではない。
高橋氏: 「そうですね。人数を増やす前に、迷う場所を減らす方が先です。うちは大きな会社ではありません。だからこそ、一人の経験を一人の中に閉じ込めない。写真でも、短いメモでも、次の人が使える形にしておく。それだけで翌月のミスが減ることがあります」
これから広げたいこと、広げないこと
これからの目標は、中小企業の既存表計算を、壊さず少しずつ業務アプリへ移すことです。ただし、高橋氏は拡大を急ぎません。採用を増やす、拠点を増やす、広告を強める。選択肢はありますが、今の顧客に向き合う時間が削られるなら採らないと決めています。
最後に、同じ地域で事業を続ける人へ伝えたいことを尋ねました。少し考えてから、高橋氏は「自分たちが続けられる速度を、他人の物差しで決めないこと」と答えました。大きく見せるより、明日も同じ品質で開けること。この記事に出てきた姿勢は、多くの小さな会社に通じる現実味があります。
帰り際、高橋氏は開発チームの席ではなく、顧客対応の録音メモを先に確認していました。「動く画面より、使う理由が残る画面」。技術の話を現場の言葉に戻す癖が、同社の仕事を支えています。