Vol.61
Vol.61 大田区仲六郷の港町ラインが樹脂切削部品で一人に頼らない組織づくり
2025年9月1日

PROFILE
会社名:株式会社港町ライン
代表者名:千木良 啓吾
所在地:東京大田区仲六郷
設立年:2016年
従業員数:41名
事業内容:樹脂切削部品、小型搬送ユニット、地域企業向けの相談対応
サイト:vol61-manufacturing.example.jp
東京の住宅地から少し入った場所に、株式会社港町ラインはあります。入口の棚には樹脂切削部品に関するメモが残され、千木良 啓吾代表は「ここを雑にすると後で戻ってくる」と話します。
最初の転機は、売上が止まった週にあった
千木良 啓吾代表が最初に語ったのは、売上が伸びた話ではありません。2019年6月、主力だった仕事が二件続けて止まり、予定していた人員表が空白になりました。「樹脂切削部品の件数が多いことと、株式会社港町ラインが強いことは別でした」と振り返ります。
——数字の見方はいつ変わりましたか。
千木良 啓吾氏: 「きっかけは格好いいものではありません。量産の下請けから試作中心へ寄せたあと、予定表より人の顔を先に見るようになりました。樹脂切削部品は段取りの乱れがすぐ表に出ます。小さい会社ほど、無理の出どころをごまかせません」
数字だけで決めないための表を作った
株式会社港町ラインでは、案件ごとの採算だけでなく、準備にかかる手間、担当者の得意不得意、翌週に残る疲れまで見ます。たとえば樹脂切削部品の依頼でも、短納期で説明が薄いものは一度立ち止まる。逆に小型搬送ユニットのように小さく見える相談でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
古い旋盤の横にある表は、外から見るとただの走り書きです。納期、数量、連絡待ち、迷った理由。そこに整った言葉はありません。けれど千木良 啓吾代表は「書いた本人が翌週読めるなら十分」と言います。判断を飾らず残すことが、同じ迷いを減らしています。
現場の迷いを翌月に残さない
——仕組みにする時、どこから手をつけましたか。
千木良 啓吾氏: 「うちは大きな会社ではないので、全員が同じ動きにはなりません。だから図面の余白に手順を書く。それを見て、次の担当が自分の言葉で確認できればいいんです」
この日、株式会社港町ラインでは樹脂切削部品の相談が二件重なっていました。千木良 啓吾代表は順番を決める前に、誰が何を見落としそうかを聞きます。予定表より先に迷いを出す。そこが現場を軽くしています。
広げる前に守りたいこと
次に手をつけるなら、無理な受注を減らしながら、紹介で来た仕事を断らない体制づくりだと話します。とはいえ、株式会社港町ラインは広告を急に増やすつもりはありません。樹脂切削部品を頼む人が「前にも聞いてくれた」と思える距離を、先に守りたいからです。
——これから広げたいことはありますか。
千木良 啓吾氏: 「続ける会社には、派手ではない約束が必要です。株式会社港町ラインなら、いつ返事をするか、どこまで見るか、何を断るか。そこを曖昧にしないだけで、お客さんもスタッフも少し楽になります」
取材後、古い旋盤の横では次の樹脂切削部品の準備が始まっていました。声は大きくありません。けれど、株式会社港町ラインでは誰が何を確認するかが自然に決まっていました。東京の小さな事業として見た時の現実味があります。