Vol.60
Vol.60 広島市西区の澄川工房がラストワンマイルで次の担い手へ渡す仕組み
2025年9月5日

PROFILE
会社名:株式会社澄川工房
代表者名:緒方 理沙
所在地:広島広島市西区
設立年:2005年
従業員数:22名
事業内容:ラストワンマイル、冷蔵配送、地域企業向けの相談対応
サイト:vol60-logistics.example.jp
広島市西区の温度計の横で、緒方 理沙代表はラストワンマイルの納品前チェックをしていました。派手な発表はありません。けれど、電話確認を減らす工夫をするという一つの癖に、この会社の続け方が出ています。
始まりは、予定通りにいかなかった月から
緒方 理沙代表が覚えている最初の違和感は、月末の売上表ではなく、朝の空気に出たと言います。2月のある週、スタッフが誰も口を開かず、温度計の横の確認だけが増えました。代表はそこで仕事の受け方を見直しました。
——数字の見方はいつ変わりましたか。
緒方 理沙氏: 「きっかけは格好いいものではありません。深夜便を減らして品質を上げたあと、予定表より人の顔を先に見るようになりました。ラストワンマイルは段取りの乱れがすぐ表に出ます。小さい会社ほど、無理の出どころをごまかせません」
増やす前に、受け方を変えた
株式会社澄川工房では、案件ごとの採算だけでなく、準備にかかる手間、担当者の得意不得意、翌週に残る疲れまで見ます。たとえばラストワンマイルの依頼でも、短納期で説明が薄いものは一度立ち止まる。逆に冷蔵配送のように小さく見える相談でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
温度計の横にある表は、外から見るとただの走り書きです。納期、数量、連絡待ち、迷った理由。そこに整った言葉はありません。けれど緒方 理沙代表は「書いた本人が翌週読めるなら十分」と言います。判断を飾らず残すことが、同じ迷いを減らしています。
一人の経験を閉じ込めない
——スタッフの声はどう拾っていますか。
緒方 理沙氏: 「最初は手順書を厚くしようとしました。でも読まれないんです。今は、電話確認を減らす工夫をすることから始めています。写真一枚、短い一文、朝礼での確認。それくらい小さくしないと続きません」
別のスタッフが、納期のメモを持って緒方 理沙代表のところへ来ました。話は三分ほどで終わりましたが、最後にラストワンマイルの確認者だけは紙に残します。小さな手間を省かないところに、株式会社澄川工房の癖があります。
地域で続ける会社として
次に手をつけるなら、無理な受注を減らしながら、紹介で来た仕事を断らない体制づくりだと話します。とはいえ、株式会社澄川工房は広告を急に増やすつもりはありません。ラストワンマイルを頼む人が「前にも聞いてくれた」と思える距離を、先に守りたいからです。
——次の10年で残したい景色は何ですか。
緒方 理沙氏: 「大きく見せるより、明日も同じ温度で温度計の横に立てることだと思います。ラストワンマイルは速さだけで勝てない場面が多いです。断る理由、待ってもらう理由、もう一度頼まれる理由を、自分たちの言葉で持っておきたいです」
帰り際、温度計の横には次の予定を書いた小さな紙が残っていました。緒方 理沙代表はそれを見て、「こういう紙が一番あとで効くんです」と笑います。こうした名もない紙には、続ける会社に必要な細部が宿ります。