Vol.62
Vol.62 大阪市阿倍野区の灯野サービスが豆乳スープで次の担い手へ渡す仕組み
2025年8月28日

PROFILE
会社名:株式会社灯野サービス
代表者名:千木良 智久
所在地:大阪大阪市阿倍野区
設立年:2010年
従業員数:44名
事業内容:豆乳スープ、地元野菜のランチ、地域企業向けの相談対応
サイト:vol62-food.example.jp
大阪市阿倍野区のレジ横の小さな黒板で、千木良 智久代表は豆乳スープの納品前チェックをしていました。派手な発表はありません。けれど、仕込み量を天気で変えるという一つの癖に、この会社の続け方が出ています。
順調ではなかった創業期の話
千木良 智久代表が覚えている最初の違和感は、月末の売上表ではなく、朝の空気に出たと言います。5月のある週、スタッフが誰も口を開かず、レジ横の小さな黒板の確認だけが増えました。代表はそこで仕事の受け方を見直しました。
——受ける仕事を変えたきっかけは。
千木良 智久氏: 「きっかけは格好いいものではありません。原価表を毎週つけ始めたあと、予定表より人の顔を先に見るようになりました。豆乳スープは段取りの乱れがすぐ表に出ます。小さい会社ほど、無理の出どころをごまかせません」
断る仕事を決めてから、現場が落ち着いた
株式会社灯野サービスでは、案件ごとの採算だけでなく、準備にかかる手間、担当者の得意不得意、翌週に残る疲れまで見ます。たとえば豆乳スープの依頼でも、短納期で説明が薄いものは一度立ち止まる。逆に地元野菜のランチのように小さく見える相談でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
レジ横の小さな黒板にある表は、外から見るとただの走り書きです。納期、数量、連絡待ち、迷った理由。そこに整った言葉はありません。けれど千木良 智久代表は「書いた本人が翌週読めるなら十分」と言います。判断を飾らず残すことが、同じ迷いを減らしています。
任せる前に、判断の順番をそろえる
——手順書だけでは足りなかった点は。
千木良 智久氏: 「うちは大きな会社ではないので、全員が同じ動きにはなりません。だから仕込み量を天気で変える。それを見て、次の担当が自分の言葉で確認できればいいんです」
この日、株式会社灯野サービスでは豆乳スープの相談が二件重なっていました。千木良 智久代表は順番を決める前に、誰が何を見落としそうかを聞きます。予定表より先に迷いを出す。そこが現場を軽くしています。
これからと、地域へのメッセージ
次に手をつけるなら、大阪周辺の小さな会社同士で、困った時に仕事を回し合える関係づくりだと話します。とはいえ、株式会社灯野サービスは広告を急に増やすつもりはありません。豆乳スープを頼む人が「前にも聞いてくれた」と思える距離を、先に守りたいからです。
——これから広げたいことはありますか。
千木良 智久氏: 「大きく見せるより、明日も同じ温度でレジ横の小さな黒板に立てることだと思います。豆乳スープは速さだけで勝てない場面が多いです。断る理由、待ってもらう理由、もう一度頼まれる理由を、自分たちの言葉で持っておきたいです」
取材後、レジ横の小さな黒板では次の豆乳スープの準備が始まっていました。声は大きくありません。けれど、株式会社灯野サービスでは誰が何を確認するかが自然に決まっていました。大阪の小さな事業として見た時の現実味があります。