Vol.71
Vol.71 墨田区八広の鳴砂相談所が検査台で品質を落とさない判断
2025年8月4日

PROFILE
会社名:株式会社鳴砂相談所
代表者名:園井 沙季
所在地:東京墨田区八広
設立年:2021年
従業員数:8名
事業内容:検査台、小型搬送ユニット、地域企業向けの相談対応
サイト:vol71-manufacturing.example.jp
取材に訪れたのは午前7時過ぎ。株式会社鳴砂相談所の加工場では、検査台を待つ小さな列ができていました。園井 沙季代表は、数字より先に現場の表情を見ます。
最初の転機は、売上が止まった週にあった
園井 沙季代表が覚えている最初の違和感は、月末の売上表ではなく、朝の空気に出たと言います。8月のある週、スタッフが誰も口を開かず、加工場の確認だけが増えました。代表はそこで仕事の受け方を見直しました。
——最初から今の形を狙っていたのですか。
園井 沙季氏: 「狙っていたというより、量産の下請けから試作中心へ寄せたことが先でした。売上だけ見れば痛かったです。でも、そこで受け方を変えなければ、8人の会社なのに一人の我慢で回す形になっていたと思います。今は月末に12項目だけ、現場のメモを見返します」
数字だけで決めないための表を作った
株式会社鳴砂相談所では、案件ごとの採算だけでなく、準備にかかる手間、担当者の得意不得意、翌週に残る疲れまで見ます。たとえば検査台の依頼でも、短納期で説明が薄いものは一度立ち止まる。逆に小型搬送ユニットのように小さく見える相談でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
加工場にある表は、外から見るとただの走り書きです。納期、数量、連絡待ち、迷った理由。そこに整った言葉はありません。けれど園井 沙季代表は「書いた本人が翌週読めるなら十分」と言います。判断を飾らず残すことが、同じ迷いを減らしています。
現場の迷いを翌月に残さない
——人に任せる時に気をつけていることは何ですか。
園井 沙季氏: 「最初は手順書を厚くしようとしました。でも読まれないんです。今は、図面の余白に手順を書くことから始めています。写真一枚、短い一文、朝礼での確認。それくらい小さくしないと続きません」
取材中にも、スタッフが検査台について短く確認しました。園井 沙季代表は結論を急がず、前回の記録を一緒に探します。正解より先に、判断の順番をそろえる。その数分が、あとで大きな手戻りを防いでいます。
広げる前に守りたいこと
株式会社鳴砂相談所が次に進めたいのは、東京周辺の小さな会社同士で、困った時に仕事を回し合える関係づくりです。ただし、園井 沙季代表は拡大を急ぎません。東京で今の顧客が困った時に思い出せる状態を保つ。そこで無理をすると、会社の声が薄くなるからです。
——若い経営者に一つだけ言うなら。
園井 沙季氏: 「続ける会社には、派手ではない約束が必要です。株式会社鳴砂相談所なら、いつ返事をするか、どこまで見るか、何を断るか。そこを曖昧にしないだけで、お客さんもスタッフも少し楽になります」
帰り際、加工場には次の予定を書いた小さな紙が残っていました。園井 沙季代表はそれを見て、「こういう紙が一番あとで効くんです」と笑います。こうした名もない紙には、続ける会社に必要な細部が宿ります。