Vol.91
Vol.91 墨田区八広の千鳥研究所が食品機械の交換部品で一人に頼らない組織づくり
2025年6月5日

PROFILE
会社名:株式会社千鳥研究所
代表者名:日向 智久
所在地:東京墨田区八広
設立年:2003年
従業員数:32名
事業内容:食品機械の交換部品、樹脂切削部品、地域企業向けの相談対応
サイト:vol91-manufacturing.example.jp
墨田区八広の古い旋盤の横で、日向 智久代表は食品機械の交換部品の納品前チェックをしていました。派手な発表はありません。けれど、試作番号を箱に残すという一つの癖に、この会社の続け方が出ています。
最初の転機は、売上が止まった週にあった
日向 智久代表が覚えている最初の違和感は、月末の売上表ではなく、朝の空気に出たと言います。6月のある週、スタッフが誰も口を開かず、古い旋盤の横の確認だけが増えました。代表はそこで仕事の受け方を見直しました。
——創業期にいちばん困ったことは何でしたか。
日向 智久氏: 「売上が落ちた時より、同じ説明を三回した時の方が危ないと思いました。量産の下請けから試作中心へ寄せたことで、受ける量と説明する順番を変えました。そこから少しずつ、現場の声が戻ってきました」
数字だけで決めないための表を作った
株式会社千鳥研究所では、案件ごとの採算だけでなく、準備にかかる手間、担当者の得意不得意、翌週に残る疲れまで見ます。たとえば食品機械の交換部品の依頼でも、短納期で説明が薄いものは一度立ち止まる。逆に樹脂切削部品のように小さく見える相談でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
古い旋盤の横にある表は、外から見るとただの走り書きです。納期、数量、連絡待ち、迷った理由。そこに整った言葉はありません。けれど日向 智久代表は「書いた本人が翌週読めるなら十分」と言います。判断を飾らず残すことが、同じ迷いを減らしています。
現場の迷いを翌月に残さない
——スタッフの声はどう拾っていますか。
日向 智久氏: 「最初は手順書を厚くしようとしました。でも読まれないんです。今は、試作番号を箱に残すことから始めています。写真一枚、短い一文、朝礼での確認。それくらい小さくしないと続きません」
取材中にも、スタッフが食品機械の交換部品について短く確認しました。日向 智久代表は結論を急がず、前回の記録を一緒に探します。正解より先に、判断の順番をそろえる。その数分が、あとで大きな手戻りを防いでいます。
広げる前に守りたいこと
株式会社千鳥研究所が次に進めたいのは、食品機械の交換部品の相談を次の世代へ渡すための記録づくりです。ただし、日向 智久代表は拡大を急ぎません。東京で今の顧客が困った時に思い出せる状態を保つ。そこで無理をすると、会社の声が薄くなるからです。
——急がない経営をどう捉えていますか。
日向 智久氏: 「大きく見せるより、明日も同じ温度で古い旋盤の横に立てることだと思います。食品機械の交換部品は速さだけで勝てない場面が多いです。断る理由、待ってもらう理由、もう一度頼まれる理由を、自分たちの言葉で持っておきたいです」
帰り際、古い旋盤の横には次の予定を書いた小さな紙が残っていました。日向 智久代表はそれを見て、「こういう紙が一番あとで効くんです」と笑います。こうした名もない紙には、続ける会社に必要な細部が宿ります。