小売・サービス

Vol.08

Vol.08 小売店が常連客との関係を深める方法

2026年3月15日

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PROFILE

会社名:株式会社サンプル商店

代表者名:小林直子

所在地:京都府京都市伏見区深草

設立年:1986年

従業員数:9名

事業内容:生活雑貨販売、季節商品の企画、近隣配達

サイト:sample-retail.example.jp

伏見の商店街で、小林直子代表は梅雨入り前に並べる傘を、入口から三歩の場所に置き直しました。大型店にはない品ぞろえで勝つのではなく、近所の人が今日困るものを外さない。三代目の店づくりです。

始まりは、予定通りにいかなかった一日から

小林氏が今の事業を語るとき、最初に出てくるのは成功した案件ではありません。「きれいに進んだ仕事より、手が止まった日のことの方が覚えています」と話します。創業時から順調だったわけではなく、むしろ早い段階で自分たちの弱さを見せつけられました。

——最初から今の形を狙っていたのですか。
小林氏: 「違います。最初は売上を作ることで頭がいっぱいでした。ただ、改装直後、若い客を意識して雑貨を増やしすぎ、古くからの客が入りにくくなった時期がありました。その時に、数を追うだけでは続かないと分かりました。何を受けて、何を受けないか。そこを決めないと、会社の体力が先に削られるんです」

転機になったのは、売れ筋だけでなく、常連の暮らしの変化を棚に反映したこと

転機は大きな投資ではなく、日々の優先順位を変えたことでした。株式会社サンプル商店では、売上表の横に現場のメモを置き、数字だけでは判断しない習慣を残しています。たとえば一件あたりの利益が高くても、準備に無理が出る仕事は次回の受け方を変える。逆に小さな依頼でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。

「判断を遅らせると、結局だれかが現場で無理をします」と小林氏は言います。会議で決めるのは、理想の話ではありません。今週の人員、道具、移動時間、担当者の疲れ具合。そうした細かい条件を並べたうえで、受ける量を決めています。

強みは、派手な言葉より手順に出る

同社のこだわりは、棚替えを数字だけで決めず、配達先で聞いた一言を売場に戻すことです。外から見ると地味ですが、ここを曖昧にすると品質は簡単に揺れます。取材中にも、小林氏はスタッフの一言に何度かメモを取りました。理由を聞くと「あとで本人に返すためです。聞きっぱなしにすると、次から言ってくれなくなる」と答えました。

——人を増やせば解決する問題ではない。
小林氏: 「そうですね。人数を増やす前に、迷う場所を減らす方が先です。うちは大きな会社ではありません。だからこそ、一人の経験を一人の中に閉じ込めない。写真でも、短いメモでも、次の人が使える形にしておく。それだけで翌月のミスが減ることがあります」

これから広げたいこと、広げないこと

これからの目標は、月1回の小さな相談会で、買い物に出にくい世帯との接点を増やすことです。ただし、小林氏は拡大を急ぎません。採用を増やす、拠点を増やす、広告を強める。選択肢はありますが、今の顧客に向き合う時間が削られるなら採らないと決めています。

最後に、同じ地域で事業を続ける人へ伝えたいことを尋ねました。少し考えてから、小林氏は「自分たちが続けられる速度を、他人の物差しで決めないこと」と答えました。大きく見せるより、明日も同じ品質で開けること。この記事に出てきた姿勢は、多くの小さな会社に通じる現実味があります。

棚の端には、配達先で頼まれた電球の型番が貼ってありました。小林氏は「売場は店の中だけで完結しない」と話します。商店街の店らしさは、仕入れより聞き取りに表れていました。

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