Vol.07
Vol.07 設備工事の品質を若手へ伝える仕組み
2026年3月15日

PROFILE
会社名:株式会社サンプル設備
代表者名:中村誠
所在地:兵庫県姫路市飾磨区中島
設立年:2003年
従業員数:26名
事業内容:空調設備工事、電気配線、保守点検
サイト:sample-setsubi.example.jp
姫路の倉庫で、中村誠代表は新人が書いた点検メモを見て「この音は残しといて」と言いました。設備工事は完成写真だけでは伝わらない。異音、匂い、配管の逃げ方まで次の現場の教材になります。
始まりは、予定通りにいかなかった一日から
中村氏が今の事業を語るとき、最初に出てくるのは成功した案件ではありません。「きれいに進んだ仕事より、手が止まった日のことの方が覚えています」と話します。創業時から順調だったわけではなく、むしろ早い段階で自分たちの弱さを見せつけられました。
——最初から今の形を狙っていたのですか。
中村氏: 「違います。最初は売上を作ることで頭がいっぱいでした。ただ、2018年の夏、応援に入った現場で配管の取り回しを読み違え、半日分をやり直しました。その時に、数を追うだけでは続かないと分かりました。何を受けて、何を受けないか。そこを決めないと、会社の体力が先に削られるんです」
転機になったのは、ベテランの勘を、写真と短いメモで共有し始めたこと
転機は大きな投資ではなく、日々の優先順位を変えたことでした。株式会社サンプル設備では、売上表の横に現場のメモを置き、数字だけでは判断しない習慣を残しています。たとえば一件あたりの利益が高くても、準備に無理が出る仕事は次回の受け方を変える。逆に小さな依頼でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
「判断を遅らせると、結局だれかが現場で無理をします」と中村氏は言います。会議で決めるのは、理想の話ではありません。今週の人員、道具、移動時間、担当者の疲れ具合。そうした細かい条件を並べたうえで、受ける量を決めています。
強みは、派手な言葉より手順に出る
同社のこだわりは、現場の判断を個人技で終わらせず、若手が見返せる形にすることです。外から見ると地味ですが、ここを曖昧にすると品質は簡単に揺れます。取材中にも、中村氏はスタッフの一言に何度かメモを取りました。理由を聞くと「あとで本人に返すためです。聞きっぱなしにすると、次から言ってくれなくなる」と答えました。
——人を増やせば解決する問題ではない。
中村氏: 「そうですね。人数を増やす前に、迷う場所を減らす方が先です。うちは大きな会社ではありません。だからこそ、一人の経験を一人の中に閉じ込めない。写真でも、短いメモでも、次の人が使える形にしておく。それだけで翌月のミスが減ることがあります」
これから広げたいこと、広げないこと
これからの目標は、播磨エリアの小規模店舗向けに、繁忙期前点検を定額で提供することです。ただし、中村氏は拡大を急ぎません。採用を増やす、拠点を増やす、広告を強める。選択肢はありますが、今の顧客に向き合う時間が削られるなら採らないと決めています。
最後に、同じ地域で事業を続ける人へ伝えたいことを尋ねました。少し考えてから、中村氏は「自分たちが続けられる速度を、他人の物差しで決めないこと」と答えました。大きく見せるより、明日も同じ品質で開けること。この記事に出てきた姿勢は、多くの小さな会社に通じる現実味があります。
倉庫のホワイトボードには、失敗例も消さずに残っていました。中村氏は「怒る材料ではなく、次に迷わない材料にしたい」と言います。若手に任せるために、判断の跡を見せる会社です。