Vol.10
Vol.10 配送品質を守る現場改善の積み重ね
2026年2月15日

PROFILE
会社名:サンプル物流株式会社
代表者名:森田大輔
所在地:広島県広島市安佐南区伴南
設立年:2010年
従業員数:54名
事業内容:地域配送、倉庫管理、共同配送の設計
サイト:sample-logistics.example.jp
午前5時40分、広島西部の倉庫で森田大輔代表は積み込み順を一つ入れ替えました。配送品質はドライバーの頑張りだけでは守れない。荷物の置き方、伝票の折り方、最初の15分で一日の乱れが決まります。
始まりは、予定通りにいかなかった一日から
森田氏が今の事業を語るとき、最初に出てくるのは成功した案件ではありません。「きれいに進んだ仕事より、手が止まった日のことの方が覚えています」と話します。創業時から順調だったわけではなく、むしろ早い段階で自分たちの弱さを見せつけられました。
——最初から今の形を狙っていたのですか。
森田氏: 「違います。最初は売上を作ることで頭がいっぱいでした。ただ、燃料費が上がった2022年、同じ件数を運んでも利益が月80万円ほど落ちました。その時に、数を追うだけでは続かないと分かりました。何を受けて、何を受けないか。そこを決めないと、会社の体力が先に削られるんです」
転機になったのは、走行距離ではなく、積み込み前の段取りに投資したこと
転機は大きな投資ではなく、日々の優先順位を変えたことでした。サンプル物流株式会社では、売上表の横に現場のメモを置き、数字だけでは判断しない習慣を残しています。たとえば一件あたりの利益が高くても、準備に無理が出る仕事は次回の受け方を変える。逆に小さな依頼でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
「判断を遅らせると、結局だれかが現場で無理をします」と森田氏は言います。会議で決めるのは、理想の話ではありません。今週の人員、道具、移動時間、担当者の疲れ具合。そうした細かい条件を並べたうえで、受ける量を決めています。
強みは、派手な言葉より手順に出る
同社のこだわりは、配車、倉庫、ドライバーの小さな待ち時間を見えるようにすることです。外から見ると地味ですが、ここを曖昧にすると品質は簡単に揺れます。取材中にも、森田氏はスタッフの一言に何度かメモを取りました。理由を聞くと「あとで本人に返すためです。聞きっぱなしにすると、次から言ってくれなくなる」と答えました。
——人を増やせば解決する問題ではない。
森田氏: 「そうですね。人数を増やす前に、迷う場所を減らす方が先です。うちは大きな会社ではありません。だからこそ、一人の経験を一人の中に閉じ込めない。写真でも、短いメモでも、次の人が使える形にしておく。それだけで翌月のミスが減ることがあります」
これから広げたいこと、広げないこと
これからの目標は、広島市内の小口配送を共同化し、空車時間を月300時間減らすことです。ただし、森田氏は拡大を急ぎません。採用を増やす、拠点を増やす、広告を強める。選択肢はありますが、今の顧客に向き合う時間が削られるなら採らないと決めています。
最後に、同じ地域で事業を続ける人へ伝えたいことを尋ねました。少し考えてから、森田氏は「自分たちが続けられる速度を、他人の物差しで決めないこと」と答えました。大きく見せるより、明日も同じ品質で開けること。この記事に出てきた姿勢は、多くの小さな会社に通じる現実味があります。
出発前の倉庫で、森田氏は伝票の置き方を一つ直しました。配送は走っている時間だけでは決まらない。「待ち時間を責めるより、待たせない順番を作る」。その考え方が現場に染みています。