Vol.09
Vol.09 学び直しを地域企業の力に変える
2026年2月15日

PROFILE
会社名:株式会社サンプルラーニング
代表者名:加藤亮
所在地:宮城県仙台市若林区荒町
設立年:2020年
従業員数:17名
事業内容:企業研修、現場リーダー育成、教材制作
サイト:sample-learning.example.jp
仙台の研修室で、加藤亮代表はホワイトボードに書いたきれいな図を一度消しました。「現場で使わない言葉なら、残しても意味がない」。同社の研修は、受講者の口から出た言葉を教材に戻すところから始まります。
始まりは、予定通りにいかなかった一日から
加藤氏が今の事業を語るとき、最初に出てくるのは成功した案件ではありません。「きれいに進んだ仕事より、手が止まった日のことの方が覚えています」と話します。創業時から順調だったわけではなく、むしろ早い段階で自分たちの弱さを見せつけられました。
——最初から今の形を狙っていたのですか。
加藤氏: 「違います。最初は売上を作ることで頭がいっぱいでした。ただ、オンライン研修を始めた年、満足度は高いのに翌月の行動が変わらない案件が続きました。その時に、数を追うだけでは続かないと分かりました。何を受けて、何を受けないか。そこを決めないと、会社の体力が先に削られるんです」
転機になったのは、講師が話す時間を減らし、現場の言葉を拾う設計に変えたこと
転機は大きな投資ではなく、日々の優先順位を変えたことでした。株式会社サンプルラーニングでは、売上表の横に現場のメモを置き、数字だけでは判断しない習慣を残しています。たとえば一件あたりの利益が高くても、準備に無理が出る仕事は次回の受け方を変える。逆に小さな依頼でも、次の関係につながるものは丁寧に拾います。
「判断を遅らせると、結局だれかが現場で無理をします」と加藤氏は言います。会議で決めるのは、理想の話ではありません。今週の人員、道具、移動時間、担当者の疲れ具合。そうした細かい条件を並べたうえで、受ける量を決めています。
強みは、派手な言葉より手順に出る
同社のこだわりは、受講後の一週間で何を試すかまで、上司と本人の間に置くことです。外から見ると地味ですが、ここを曖昧にすると品質は簡単に揺れます。取材中にも、加藤氏はスタッフの一言に何度かメモを取りました。理由を聞くと「あとで本人に返すためです。聞きっぱなしにすると、次から言ってくれなくなる」と答えました。
——人を増やせば解決する問題ではない。
加藤氏: 「そうですね。人数を増やす前に、迷う場所を減らす方が先です。うちは大きな会社ではありません。だからこそ、一人の経験を一人の中に閉じ込めない。写真でも、短いメモでも、次の人が使える形にしておく。それだけで翌月のミスが減ることがあります」
これから広げたいこと、広げないこと
これからの目標は、東北の製造・介護現場向けに、短時間で回せるリーダー育成を増やすことです。ただし、加藤氏は拡大を急ぎません。採用を増やす、拠点を増やす、広告を強める。選択肢はありますが、今の顧客に向き合う時間が削られるなら採らないと決めています。
最後に、同じ地域で事業を続ける人へ伝えたいことを尋ねました。少し考えてから、加藤氏は「自分たちが続けられる速度を、他人の物差しで決めないこと」と答えました。大きく見せるより、明日も同じ品質で開けること。この記事に出てきた姿勢は、多くの小さな会社に通じる現実味があります。
研修後のアンケートより、加藤氏が気にするのは一週間後の小さな実行です。「よかった」で終わる研修は残らない。受講者が職場で一つ試し、上司がそれを見るところまで設計していました。